永遠は菫色

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  おしまい  

 それは戴冠式前夜のことだった。
 病床の王のもとを訪れたのは、淡雪のような髪に紫の瞳をした少女だった。
 凶兆と呼ばれる紫の瞳をものともせず、誰よりも魔法に秀で、身も心も美しく育った王女は、明日いよいよ王位を継ぐことになる。
「陛下。御伽噺を聞かせてくれる? 可哀そうな王女様と、彼女の愛したお人形さんの」
 孫娘の笑みに、王は目を細めた。その面差しは、はっとするくらい王の愛した異母姉と似ていた。
 一滴の涙が、王の頬を伝う。歳を重ねて、愛する人々の旅立ちを見送ってから、どうにも涙腺が緩くなって仕方がなかった。
「この星の、とある世界の、とある大国。
 魔法に支配されたその国に、ヴィオレット・クエルバスという王女がいた。不遇の王女として知られる彼女の生涯には、老いることのない青年が寄り添っていたという」
 二人は愛しあう恋人であり、夫婦であり、半身であった。機械仕掛けの男は、心など持たぬはずの人形は、菫色の王女の隣に在ることで魂を得たのだ。
 王女の死後から、十数年。誰もが欲しがった美しい人形の行方は明らかにされていない。
 ふたりが分け合った永遠は、御伽噺の結末は、いまは王だけが知っている。


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