鋼の翼

- 銀の剣 -

 銀色に光る剣を手に、俺は静かに顔をあげた。
 眼前に広がる鬱蒼うっそうとした森の主は、妖花と呼ばれる魔族。他者の命を養分として生きる、紅い瞳をした人ならざる化物。
 この地に飢えをもたらし、大切な少女を奪った仇。
「……、コレット」
 強く剣を握りしめて、愛しい少女の名を口にする。
「俺が、君の仇をとるよ」
 妖花を殺して、彼女の墓標に届かなかった想いを伝えよう。

 ――、君が、誰よりも好きだった。



web拍手