永遠は菫色

モドル | ススム | モクジ

  03  

 満点の夜空が、上にも、左右にも、足下にも広がっている。
「エリクは、《挟間》にいて長いの?」
「長いか短いかは分からない。時間の感覚なんて意味がないと思っているし。特に、《挟間》にいると、朝も夜もごちゃ混ぜでしょう? いろんな世界の理が混ざっているから、時間が正常に流れているわけでもない。ヴィオレット、ここに落ちてきたときと変わらないでしょう?」
「そうね。お腹も空かないし、爪も髪も伸びない。自分の身体が、時が止まったみたいに何も変わらないんだもの。眠くなるけど、きっと本当は眠らなくても平気なのよね。あなた、もしかして、すごく年上なのかしら?」
「どうだろう。棄てられたときには、この身体は十八歳って、周りの人は言っていたけど。僕の故郷では成人なんだ、十八歳が。まあ、僕は《挟間》にいて長いし、そもそも年齢なんてエリク・ドッカには何の意味もない」
「それ。癖なの? 自分のこと名前で呼ぶの。ちっちゃい子どもみたいよ」
「エリク・ドッカはドッカだから、これで間違いないよ? それに、ちっちゃい子に、ちっちゃい子どもみたいって言われるのは変だよ。ヴィオレットはいくつ? ヴィオレットこそ、ちっちゃい子どもでしょ」
「失礼ね、ちょうど成人した歳よ」
「十四歳なんだね。魔法使いの成人は早いよね。僕の世界とは違う」
「あなた、わたくしの国にも詳しいのよね」
「だって、僕と君の故郷。ちょっとだけ交流があったから」
「え?」
「そっか。僕の故郷のことは言っていなかったから、分からなかったんだね。でも、ちょっと説明しづらいな。そんな頻繁に繋がっていた世界じゃないし、僕、その部門からは遠ざけられていたから。変なところでボロが出ると困るって」
 ぶつぶつと独り言を零して、エリクは唇を尖らせる。
「あなたの故郷って、どんなところ?」
「君の世界とは、ぜんぜん違う理(ことわり)で動いている。僕の故郷はね、魔法みたいな不思議な力がない代わりに、いろんな造りモノがある。自分で空は飛べないけど、空を飛ぶ道具はある。怪我は治せないけど、腕を失っても、腕の代わりをしてくれる機械がある。機械って分かる?」
「カラクリのことでしょう? いろんなことをしてくれる」
「ふふ。魔法使いには必要のないモノだから、よく分からないでしょ」
「あなたの手先が器用なのは、カラクリを弄っていたから?」
「弄っていたのは僕ではないけれどね。でも、僕は機械とは友達だから。分解したら、みんな同じなんだよ。組み合わせが違うだけで」
「よく、分からないわ」
「僕は、僕の故郷のものなら何でも治せるってことだよ。ここは設備も道具も不十分だから、少し手間取ってしまったけど」
 エリクはそっと、ヴィオレットの掌にピアスを載せた。
「これは、わたくしのピアスでしょう? あなたの故郷のものではないわ」
「ううん。僕の故郷のものだよ。ピアス自体は君の故郷で作られたものだけど、細工がされているんだ。だから、壊れているって分かった」
「細工?」
 エリクは頷いて、ピアスの飾りに嵌められた透明な石を、指で捻った。驚いたヴィオレットに構わず、彼は何かを探し当てるように、数回、石を左右に回す。
「きっと繋がるよ。だって、ヴィオレットには、ヴィオレットのことを望む人がいるから」
 エリクは笑って、ヴィオレットに抱きついた。
『ヴィオレット?』
 次の瞬間、ピアスから聞こえたのは男の声だった。
 最後に聞いたときよりも低くて、最初は誰の声か分からなかった。でも、続いた言葉に、相手が誰なのか分かった。
『姉上。そこにいるのですか? いるのなら、どうか返事を。私の声が聞こえますか』
「……ヨハン?」
 ヴィオレットは戸惑う。ヨハンとお揃いのピアスから、まるで彼が傍にいるように声がするのだ。
「通信機。君のピアスを拾ったとき、見覚えがあるなって、思ったんだ」
 エリクが零した。
「通信機?」
「離れた場所同士で会話ができる道具だと思って良いよ。世界と世界を跨ぐためには、本当は仲介となるものが必要なんだけど、君たちの国の魔法がそれを補っているのかな。ちょうど君が《挟間》に落ちたとき壊れてしまったみたいで、向こうからの通信を受けることも、向こうに通信することもできなかったんだ」
 つまり、ヴィオレットを呼んでいるのは、紛れもなく母国にいるヨハンなのだ。
『無事、なのですか? すみません、もう、もう大丈夫ですから。あなたに危害を加える者はいないから』
 いつも理性的で、落ちついているヨハンにしては珍しく、動揺している。
「ヴィオレットは、憎まれたから《狭間》に落とされたって言ったけど、違うと考えた。本当に邪魔なら、こんな回りくどい真似せずに殺す方が良い。人間なんて簡単に死ぬもの。――殺さなかったことに、別の理由がある」
 そうして、エリクはピアスに施された細工、彼の故郷の技術を使った通信機の存在に気づいたのだという。エリクは落下の衝撃で壊れてしまった自国の品を修理し、ヨハンとの通信を可能にした。
「大丈夫だよ」
 エリクは、ヴィオレットを慰めるように小さな手を握りしめた。冷たく体温など微塵も感じられない掌だというのに、何よりも暖かに感じられた。
 失くしてしまった勇気を、エリクが与えてくれた。胸の奥から、怯えて口にできずにいた問いが込み上げる。
「ヨハン。……わたくしのこと、憎い? 邪魔だった?」
 二人過ごしてきた時間を否定されたら、胸は張り裂けて、二度と立ち直れないかもしれない。
 それでも、ヴィオレットは、弟の答えを受け止めなければならない。
 どのような真実が隠れていようとも、それこそヴィオレットとヨハンが過ごした時間の証なのだ。憎まれていたとしても、それが二人過ごした結果ならば、ヴィオレットは認めたい。
 認めて、今度こそ弟と一緒に戦いたい。彼だけを矢面に立たせたりしない。
『ばかなことを! ヴィオレット、私のたったひとりの姉上。私のたった一人の家族。私が、どれだけ、あなたに支えられてっ……!』
 言葉に詰まったヨハンに、堪らず、ヴィオレットはエリクの手を握りしめた。
「本当?」
『あの日、議会で、あなたの処刑が決議されたんです。あなたは魔法使いとしては非力だ。生かして火種となるくらいなら、いま殺すべきだ、と。……即位したばかりの私では、どうしても、あなたを守りきることができなかった』
 処刑。ヴィオレットにとって、十分納得できる結末だった。
 その昔、王位争いが終わると、当代の王族を根絶やしにしていた時代もある。ヨハンを王とするために動いていた者たちは、そんない慣例を引っ張り出してまで、ヴィオレットを殺したかったのだ。
 ヴィオレットが子を成せる若い娘であったため、なおさら議会は急いだ。
 殺しておけば、後の憂いは消える。
 ヨハンを王に推していた者たちにとって、血筋だけは強力で、厄介な後ろ盾を持っていたヴィオレットは邪魔者でしかなかった。
「わたくしは、死んだことに?」
『行方不明とされていました。王族の死は、魔法使いにとって簡単に感知できることですから、生きている事実だけは隠せません。……ですが、もう大丈夫です。こちらでは、十年も経っているのですよ』
 ヴィオレットは息を呑む。ヴィオレットは変わらず十四歳だが、十年も経てば、ヨハンは二十歳を過ぎた年上の男だ。
「……そう、なの」
 空白の十年間に思いを馳せる。どれだけのことが、ヴィオレットの故郷では変化したか。
『戻ってきてくれませんか。以前のように華やかな生活は送れません。日陰者にも、させてしまうでしょう。けれども、必ず守りますから』
 不思議と迷いはなかった。戻ったところで、以前のような生活はなく、自分を残して時間ばかり進んでいるだろう。それでも、十年間もヴィオレットを案じてくれた家族がいる。
「戻った方が良い。君に、ここは似合わないから」
「エリク」
「はじめして、ヨハン。僕はエリク・ドッカ。……名前くらいなら、聞いたことあるかな。ここでヴィオレットを拾ったんだ」
『ドッカ? まさか、あちらの世界の』
「うん。君が改造した通信機をつくった世界のドッカだよ。――ヴィオレットのこと、帰してあげる。王様なら、扉の開き方は知っているよね? 君の世界の扉の鍵を開け。あとは、縁さえあれば、ヴィオレットを帰してあげられる。元々、通信機さえ壊れていなければ、こんなに待たずに、そうするつもりだったんだろう?」
『ええ。その通信機のピアスは、ヴィオレットが母親から譲り受けた形見なのです。同じ意匠でふた揃えあって、片方は私が持っています。こちらとそちらを繋ぐ縁になるはずです』
「なら、大丈夫かな。君と彼女の間には血縁もあるしね。準備ができたら、合図を送ってくれる? 彼女を送り出してあげる」
『……それで、あなたはよろしいのですか』
 ヨハンの探るような言葉に、エリクは笑った。
「ヴィオレットのことよろしく。壊れないようにしてね。大事にするんだよ。そうじゃなきゃ、帰せない。だって、僕が拾った僕のモノを、帰してあげるんだから」
『必ず守ります。ヴィオレット、待っています、あなたのことを』
 そこで、通信は切れてしまった。
 ヴィオレットは糸が切れたように、エリクの腕のなかで崩れる。
「帰れるの? わたくしは」
「良かったね」
 心から、エリクは祝福の言葉をくれた。彼の言うとおりで、焦がれていた場所に帰ることができるのならば、これ以上に嬉しいことはない。
「あなたも、そう思ってくれる?」
「君は僕と違うもの。棄てられたわけじゃないなら、 帰らないとダメだよ」
 ヴィオレットは眉をひそめた。
 故郷に帰ったあと、エリクはどうやって《挟間》で過ごすのだろう。以前と変わらず、独りきりで、この場所に囚われるのだろうか。
「寂しいわ」
「寂しくないよ。君は帰るんだから」
 あなたと別れることが寂しいのだ、という言葉は、エリクには伝わらなかった。寂しい。ヴィオレットがそう思うように、エリクにも別れを惜しんでほしかった。
 エリクの腕のなか、ヴィオレットは唇をつぐむ。
 好き。もっと一緒にいたい。そんな我儘、ヴィオレットの帰還を喜ぶ彼には言えなかった。

◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇

 別れの日は、案外すぐにやってきた。
「抱きあげても良い? 最初の日みたいに」
 《挟間》にある門扉――ヴィオレットが落ちてきた扉まで向かう道中、エリクは言う。
「もう怪我をしたりしないのに?」
 最初、彼が抱きあげてくれたのは、ヴィオレットが素足だったからだ。彼の作ってくれた靴がある今、歩いたところで怪我をすることはない。
「でも。なんだか、抱きあげたいんだ。理由は分からないけれど。変だよね?」
「変じゃないわ。あなたが望むなら、いくらでもどうぞ」
 エリクは理由がないことはしない。気分で物事を考えない。彼の行動には、感情ではなく、明確な理由があるのが常だった。
 そんな彼が望むことなら、いくらでも叶えてあげたかった。
 はじめて会った日と違って、抱きあげられても嫌ではなかった。むしろ、安心してしまう。
「ヴィオレットは、あったかいね」
「エリクが冷たいんじゃないかしら?」
「生きているって感じがする。だから、やっぱりこんな場所は似合わない。ここは墓場のような場所だから、生きている者には似合わないよ」
 宙に浮かぶ門扉が見えてきたとき、エリクはそう言った。まるで、自分が死者であるかのように語ることが、ヴィオレットには我慢ならなかった。
「なら、あなたにも似合わないわ。……あなた、あたたかいもの。優しいんだもの。生きて、いるんだもの。たとえ、あなたの故郷に、あなたを望む人がいなくても。わたくし、あなたのことが大好きよ。生きていて欲しいって、心から願っているの」
 だから、墓場がふさわしい、なんて言わないで欲しかった。ここで、誰にも看取られることなく朽ちてほしくなかった。
 エリクの故郷にいる人たちが、エリクのことを要らないと言うのなら、ヴィオレットのモノにしたって構わないだろう。
 エリクは目を丸くして、それから微笑んだ。この星を生んだ神々が、手塩をかけて創ったような完璧な美貌には、作りものめいた笑みがよく似合った。
「そっか。ヴィオレットはずっと、勘違いをしていたんだね。僕が、君と同じなんだって思っていたから、君はずっと変だったのか。君を拾ったときの僕と、同じ勘違いをしていたんだ」
「同じ?」
「君があんまりにも綺麗な顔をしていたから。故郷にあった少女人形みたいだったから、君のことをそうだと思った。可愛いお人形さんだって」
 そこまで言われて、ヴィオレットは青ざめた。
 同じ勘違い。つまり、エリクは最初、ヴィオレットのことを自分と同じモノだと勘違いしていた。
「……あなた、何なの?」
 何故、気付かなかったのか。
 この星は、様々な世界が重なり合い、犇めき合うようにして成り立った。
 ヴィオレットが知らぬだけで、言語を解する人ならざるものが生み出される世界があっても、決して可笑しくはないのだ。
「僕はエリク・ドッカ。エリクという少年を基に造られた、機械仕掛けの人形だよ。僕の名前にあるドッカはね、古い言葉で人形を意味するんだ」
 ヴィオレットは声を失くした。いま、ヴィオレットを抱きあげる男は、どう見ても血の通った人間にしか見えないのだ。
「名も人格も、この身体の原型となった少年……僕の世界に生まれた、エリクという王子が基になっている。僕は母の胎からではなく、冷たい培養液から生まれた。空っぽの肉の器に、君の言うところのカラクリをたくさん詰め込んで造られたんだよ」
「そんな、そんな恐ろしいことを。誰が」
 生と死。それを弄ぶことは、魔法使いですら手を出さない禁忌だ。
「みんな、だよ。本当のエリクは幼くして亡くなったんだ。でもね、彼は王子だった。亡くなった王子の未来を願った人は、たくさんいたんだよ」
 まるで、死者をよみがえらせるかのようだった。
 幼くして亡くなった王子が、未来で成人したなら、きっとこんな姿かたちをしている。そんな周囲の身勝手で、人形(ドッカ)は造られた。
「なら、どうしてなの。どうして、あなたが棄てられるの? たくさんの人々に望まれたから、あなたは造られたのでしょう」
「人形は、人の形をしていても人間になれない。僕はエリクの代わりになれなかった。だって、みんなが望んだ王子は、こんな機械仕掛けの人形ではないから。みんな、生きているエリクに会いたかったんだよ」
 誰かの代わりとして造られた人形は、そうして《狭間》に棄てられたのだ。
 耐えきれず、ヴィオレットはエリクの首に抱きついた。柔らかな身体だが、この肌の奥に隠されているのは、鼓動を刻まぬつくりものなのだ。
 はじめて会ったとき、エリクがヴィオレットを人形と間違えたのは、彼自身が人形だったからに他ならない。
「ずっと、独りだったの?」
 彼が《狭間》に棄てられたのが、いつだったのか。人間であるヴィオレットにとって、気の遠くなるような昔に違いない。
「ずっと、が僕には分からない。僕はね、永遠を望まれたんだ。幼くして亡くなった王子が、死を克服して、永遠に動いていられるように、と生み出された。だから、《挟間》に落とされる前から、僕には時間の概念がないんだよ。過去も未来も、一日も千年も同じこと」
 エリクは目を伏せた。寸分の狂いなく揃った睫毛が、染みひとつない頬に影を落とす。
「同じ、だったのに。ねえ、ヴィオレット。教えてよ。君と出逢ってから、なんだか胸の奥が痛いんだ。変だよね。壊れてしまったのかな」
 エリクはつぶやく。深い哀しみに彩られた声だ、とヴィオレットは感じた。
 心とは、魂とは何なのだろう。
 生きているものにしか与えられないならば、いまエリクに宿された悲哀は偽りなのか。偽りだなんて、いったい誰が決めたのだ。
「一緒に……、一緒に、いきましょう。エリク」
 ヴィオレットは彼に抱きつく腕に力を籠めた。勇気を出せず、この瞬間まで口に出せなかった言葉で、彼に懇願する。
「一緒に?」
「わたくしの故郷に帰るのよ。誰も、あなたを要らない、と言うのなら。わたくしのモノにしても許されるでしょう? わたくしのモノなら、わたくしの一部だもの。きっと一緒に扉を通ることができるわ」
「僕は人形だよ。誰かの……エリクの代わりにさえなれなかったけど、僕の代わりはたくさんいる。この身体は、心は、まがい物だから。なんの価値もなくて」
 本物はつくれなくとも、偽物ならばつくれる、と彼は笑った。悲痛な面持ちになっていることすら、きっと気づいていない。
「あなたの代わりがいたとしても、わたくし、あなたが良い。あなたに傍にいてほしいの。だって、分け合うことは幸せだ、と教えてくれたのは、あなたよ。幸せなら、死も、終わりだって分け合いましょう?」
 ひどく勝手なことを言っている自覚はあった。
 死を克服し、永遠となるために生み出されたエリクの存在意義を、ヴィオレットは真っ向から否定している。
 限りある時間は彼にとって毒だ。その毒を含ませる覚悟を、ヴィオレットは決めた。
「ヴィオレットと、一緒に?」
「そう。ぜんぶ、分かち合いましょう。幸せになるのよ」
 彼に魂がないならば、ヴィオレットのそれを分けてあげよう。そうして、この命が尽きるときに、彼を道連れとして壊し、共に果てなき場所に旅立つのだ。
「わたくしと一緒は、嫌?」
 彼はゆっくりと首を横に振った。
「分からない。でも、なんだか、とても……、とても、不思議で。嬉しいって、幸せって、こうなんだって、分かったような気がするんだ。そんなの、あるはずないのに」
 顔をくしゃくしゃにして彼は笑う。せっかくの整った顔が台無しの、まるで笑い方を知らない赤子のような笑みだ。
「僕を、連れていってくれる?」
 ヴィオレットの眦から涙が流れる。それはきっと、泣くことの叶わない彼の涙だった。
 つらく苦しいことも、乗り越えていかなければならないことも数多くあるだろう。互いの差異に壁を感じて、相手を疎んでしまう瞬間さえあるかもしれない。
 だが、そのすべてを二人で分かち合い、いつか辿りつく終わりを――永遠を共にしよう。
 そのとき、《狭間》の門は開かれる。
 エリクの菫色の髪が、荘厳な門から吹き込む風になびいた。それは美しく、きっと生涯忘れることのできない、魂に刻まれるような色だった。
 きっと、ヴィオレットの望む最期は、彼と同じ色をしている。
「約束するわ。最期まで、あなたを連れていってあげる」
 ヴィオレットの菫色、二人分かち合う永遠の色だ。

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