マグノリアの悪魔
終幕 マグノリアの悪魔
帝歴二八〇年。
帝城は、皇族殺しの罪をレナ・ダールベルクのものとした。わずか十八の少女は、恐るべき罪人として、諸外国に悪名を広める。
――あれは白木蓮の花が咲き乱れる、麗しい春のこと。
火刑に処されたレナ・ダールベルク。
奇妙なことに、その遺体は骨さえ遺らなかったという。
ある者は語る。業火に焼かれる少女を抱きしめるように、赤髪の男が炎に飛びこんでいった、と。
さて、これより先は著者のつまらぬ感傷である。
幸か不幸か分からぬが、著者は彼女の火刑に立ち会った。
今でも忘れることはできない。火にかけられる瞬間、彼女は微笑んだ。愛しい男が、そのまなざしの先にいるかのように。
レナ・ダールベルク。
あれは悪魔のように美しい少女だった。
《マグノリア帝国史、あるいは最後の皇帝エドガーの手記より引用》
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