第一幕 勇者と聖剣 06
虹色の花弁が宙を舞っている。咲いては散りゆく花は、終わりを知らぬように、素知らぬ顔で永遠を刻み続ける。
その光景を見つめていた
未来樹は、ゆっくりと目を伏せた。
幾千の花片が降り注ぐ森を、三人で歩いた日があった。赤髪の少女が未来樹と青年の手を引いて、軽やかに歩く姿が瞼の裏に浮かぶ。氷の美貌に似合わぬあどけない笑みで、彼女は高らかに幸せを謳っていた。
あの頃が、きっと、彼女の生涯で唯一幸福な時間だった。
「何度でも、……君を呼ぶよ。フレア」
未来樹は、祈るように囁いた。
母を喪った己に彼女が手を差し伸べてくれたように、未来樹は何度でも
彼女」を救い上げるだろう。
理が終わりを告げぬ限り、永久に三人は廻り合うのだから。
過去は、未来で繰り返されていく。
志半ばで死した二人のために、道は繋がれていく。
「いつになったら、君たちに会えるのかな。フレア、ブレイク」
未来樹の切なる声は、誰にも届くことなく風に攫われた。